組込みシステムやSoC (System-on-a-Chip) 設計において,設計生産性や品質の向上,開発期間の短縮を可能にするためにシステムレベル設計手法が考案された.システムレベル設計とは,システムの設計仕様を段階的に具体化する過程でハードウェアとソフトウェアに分割・実装し,最終的にそれらを一つに統合する設計手法である.しかし,今日の組込みシステムは,高機能化・高性能化に伴い,設計規模が爆発的に増大してきたため,システムレベル設計の設計抽象レベルを更に引き上げる必要が生じてきた.
そこで,近年,プログラム設計のモデリング言語であるUML (Unified Modeling Language) を用いた組込みシステムやSoC設計が注目を集めており,そのための研究や標準化 (UML2.0 profile for SystemC,UML Profile for SoC,SysML,MARTEなど) が産学界で活発に進められている.しかし,これらの問題点として,作成したモデルをUML上で検証できないため,検証を行うにはUMLモデルを一度,プログラミング言語に変換し,抽象レベルを落とす必要があること,システムレベル設計の仕様モデルから実装モデルまでの段階的具体化設計を,設計言語に依存した形で行わなければならないことなどが挙げられる.
本研究では,近年,ソフトウェア工学の分野で注目されているモデル駆動アーキテクチャ (Model Driven Architecture,MDA) に基づく実行可能UML (Executable UML,xUML) をシステムレベル設計に応用し,これらの問題を解決することにした.実行可能UMLとは,UMLにアクション言語を追加したものであり,作成したモデルをコンパイルし,実行することができる.また,実行可能UMLモデルから,CやJavaなどのプログラムコードを自動生成することができる.
特に,本研究では,既存研究である段階的具体化のリファクタリング (変換) 規則を実行可能UML上で定式化することを目的とした.その中でも,仕様モデルからアーキテクチャ探索におけるスケジューリングまでに当たるシステムの機能部分の具体化に焦点を当て定式化を行った.研究では実行可能UMLの一つであるiUMLを用いた.さらに,これら実行可能UML向けのリファクタリング規則を,実際のシステム設計事例であるGSM (Global System for Mobile Communications) ボコーダの段階的具体化設計に適用し,実用性を確認した.このようなアプローチにより,UML上でモデルの検証が可能になり,また,システムの仕様から実装までを一貫してUMLで記述できるため,システムの再利用性や生産性,品質の向上が期待できる.