P2Pネットワークとは,参加するコンピュータ (ノード) がオーバレイネットワーク上で協調して動作するネットワークである.ネットワークを集中的に管理する機構が存在しないため,P2Pには検索手法を工夫したいくつかのネットワーク形態が存在する.それらを検索手法により,Hybrid P2P,Pure P2P,DHT (Distributed Hash Table,DHT) 型P2Pの3つに分類することができる.中でも近年,ストレージ容量や処理の負荷を分散し,かつ検索性能に優れているDHT型P2Pが注目されている.しかし,DHT型P2Pは,ハッシュ関数を用いてノードやコンテンツに一意的なIDを割り当てることによりネットワークを構造化させているため,複製配置が困難であるという欠点がある.複製配置は,コンテンツへのアクセス負荷の分散やアクセス効率を向上させる手法として有効なアプローチである.どのようなP2P方式を用いてもアクセスの集中が起こる可能性があり,DHT型P2Pもその例外ではない.DHT型P2Pにおいても複製配置は必要な技術である.
そこで本研究では,DHT型P2Pの中でも代表的なプロトコルであるChordにおける複製配置手法を提案した.提案手法では,コンテンツ複製を配置するノードに,複製元ノードのfinger tableと管理している全てのコンテンツ複製あるいは仮複製を置き,複製配置先のノードが複製元のノードと同様の動作を行うことができるようにすることで,Chordにおける複製配置を可能にした.
そして,提案手法を実装したシミュレータを作成し,シミュレータを用いて提案手法の検証を行い,Chordにおける複製配置を行うことにより,アクセス効率の向上とアクセス負荷が分散されることを確認した.