Master Thesis Abstract (in Japanese)
修士論文要旨

システムレベル設計における消費電力見積もりに向けたスイッチング解析

白石 崇
2008年2月

組込みシステムの設計において,システム仕様はハードウェア (HW) 仕様とソフトウェア (SW) 仕様に分割される.そのHW仕様とSW仕様への分割には,各々に対する見積もり指標が必要となる.また,SWはそのシステムに組み込まれたCPUのためのコンパイラにより機械語にコンパイルされ,CPU上で実行される.なので,コンパイラによる最適化のためにも見積もり指標が必要となる.

HW仕様とSW仕様の分割における見積もり指標としては,実行速度,メモリ効率,消費電力などの非機能要求がある.特にSWに関しては,実行速度,メモリ効率の見積もりについては従来から研究,技術開発が進んでいるが,消費電力の見積もりについてはまだあまり研究が進んでいない.また,高級言語による開発が浸透し,コンパイラの最適化はSWに大きな影響を及ぼす.従来のコンパイラは速度,メモリ効率を考慮して最適化を行っていた.しかし,消費電力も考慮したコンパイラによる最適化も今後は重要となる.

最適化の指標となる命令毎の消費電力指標が必要である.その消費電力の指標には命令毎の消費電力データなどが考えられる.しかし,消費電力の見積もりまで可能な高機能エミュレータはまだ少なく,それが提供されるプロセッサは限定されている.また,組込みシステム設計においては,実際のHWを実装する前に見積もりを行う必要があり,実際のプロセッサで測定することは,それに逆行する.消費電力は,ゲートの出力のスイッチングによって生じるスイッチング電力,スイッチングの過程で発生するグラウンドへの貫通電流によって生じるショートサーキット電力,ゲートがスイッチングしなくても消費する漏れ電流によって生じるリーク電力から成り,現在,CMOSの消費電力の多くはスイッチング電力が占める.そのため,本研究ではより簡便な消費電力指標の模索のため,CPU内のゲートのスイッチング回数の活用を考える.

本研究では題材として,実際の組込みシステムで最も多用されているプロセッサの1つであるPIC16F84互換のプロセッサのハードウェア設計部品 (この分野ではIPと呼ばれる) を用いる.具体的には,プロセッサのIPでのシミュレーションを行い,シミュレーションの波形データからゲート毎のスイッチング回数を測定し,命令毎の消費電力を推定する.このような手順で,命令カテゴリごとの消費電力の比較を行い,コンパイラによる最適化に用いるためのデータを採集する.最終的には,低消費電力のためのコンパイラの最適化の指針を検討する.残された課題としては,解析データのコンパイラ開発への提供や,SWのための高精度な消費電力見積もりが挙げられる.


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